四十肩、五十肩

肩関節の炎症のわかりやすい動画を見付けて、いつか紹介しようと思っていたら、タイムリーに患者さんから「四十肩・五十肩って何で起こるんですか」と聞かれたので、記事にしてみます。多分かなり長くなりますので興味のあるところだけ読んでみてください。

ちなみに、40代で起これば四十肩、50代で起これば五十肩です。なぜか60代以降では起こりにくいようです。腰椎ヘルニアが、椎間板が瑞々しい若い世代で起こりやすいのと似たような原理かと思いますが、実際のところは分かりません。

ではまず、分かりやすい動画を貼ります。

最初に分厚くなっていくのが、「滑液包(かつえきほう)」という、肩関節をスムーズに動かすための潤滑剤が入った袋です。健康であれば、この中の潤滑剤(滑液)の産生と吸収がスムーズに行われています。加齢によりその機能が低下すると、滑液が溜まって膨れていき、動かした時に骨と繰り返し擦れ、傷ついた部分に炎症が起きます。

かなり激しい痛みが出る急性期(数日〜1、2ヶ月)を過ぎると、動かすと痛い・夜寝るときに痛むといった慢性期に入ります。これは教科書的には〜4ヶ月のようですが、患者さんや周囲の話を聞いていると、半年以上続く方も多いです。この数ヶ月の間に、次第に滑液包内の液体成分が失われ、組織が硬くなると、痛みがなくなってきます(回復期)。ただし肥厚した部分がそのまま硬くなるので、関節を動かせる範囲は狭いままです。

そのため、整形外科では「急性期を過ぎたら、痛みを我慢しながら体操をしてなるべく動かしていく」ことをすすめられます(組織が完全に水分を失い固まってしまう前に動かせる範囲を広げながら、筋肉もつけていく目的だと考えられます)。

以上は「広義の」四十肩、五十肩の説明の1つとなります。この画像の状態で病院に行った場合、広く「肩関節周囲炎、いわゆる五十肩ですね」と言われるかもしれませんし、具体的に「滑液包炎」と診断されるかもしれません。

肩関節は、上記の滑液包(肩峰下滑液包)以外にも、いくつかの滑液包・腱、腱板と複数の要素で複雑に構成されています。何かの拍子に傷がついたり、石灰が沈着して炎症の起きた場所とその程度によって、痛む動作・重症度が変わってきます。

当院での治療

純粋に肩関節だけの問題の場合、

  • 原因となる部位を正しく絞り込む(複数箇所のこともある)
  • その部位の炎症や循環低下を改善する部分に、ピンポイントで鍼をする

の2点をクリアする必要があります。初めはガチガチで動かせない方も、緩み始めるとだんだん問題の場所が絞られてきます。

「純粋に肩関節だけの問題」と書いたのは、それ以外の問題が痛みを出すこともあるからです。肩関節を動かす筋肉もまた、膜レベルで体の内側と繋がっていきます。内臓など内側の組織が、肩関節につながる筋肉を引き下げることで、痛みを出すこともあります。この場合は比較的変化を感じていただきやすく、1回で効果を実感いただけることもあります。

以上のことを考え、整形外科で五十肩と診断されて来院された方には、痛みが数ヶ月単位で続くことも覚悟していただいた上で、オステオパシーと鍼灸を併せた治療(+内臓矯正コース)を間隔を詰めて何度か行う。内臓等の問題が無いまたは解決したら、肩関節のみの治療(はり灸コース)に切り替えて、無理のないペースで治療を続ける。そうして全身の回復力を上げながら、問題部位の循環改善を狙う方針を提案します。

整形外科でのリハビリやそこで教わる自宅での体操は、できるだけ地道に続けることをおすすめします。鍼灸師仲間が勉強している「関トレ」も有効そうです。

予防のためには

「予防法はありますか」とも聞かれたのですが、今まで習ったりしたことがなかったので、考えてみました。アラフォー〜アラフィフの方向けです。

肩関節内の組織が傷つかないようにする

  • 自分の肩関節が耐えられる以上の重い物を持たない。
  • 自分の肩関節の可動域を知り、それを大きく超えた動きは避ける
  • 肩を沢山動かす時(バドミントン、水泳、窓拭き掃除・・・)は、事前によく準備体操をする

関節内の循環を良くする

  • 日常でもなるべく準備体操的に動かす(痛くない程度に)
  • 「水」をしっかり取る(飲水法については来院の方にお伝えしています)
  • 睡眠をよく取る

石灰沈着がある場合は善玉カルシウムを摂る

カルシウムについて、とある1つの説があります。大まかにまとめると、

石灰沈着と聞くと「カルシウムを採り過ぎているからだ」と考えがちですが、その逆で、カルシウム不足で血中のカルシウムが減ると、自分の骨からカルシウムを放出させてバランスを取ります。このカルシウムは、食品から摂るよりも体内の組織に沈着しやすいため、食品でカルシウムをしっかり摂る必要があります。ただし、カルシウムを摂る際には「善玉カルシウム」を摂らないと逆効果になります(説明はまとめられそうもないので省略・・・)。

こちらの漫画はAmazonで無料で読めますので、興味のある方はどうぞ。

私自身は、この説を知ってからは、サプリメントでカルシウムを摂る場合は、少し割高ですが「風化貝カルシウム」を選んでいます。

肩関節も消耗品

あらゆる関節は消耗品です。人間の体は、時間の経過とともに少しずつですが着実に機能は低下します。不養生な生活や怪我をするとその速度は加速します。メンテナンスをしながら、大事に使っていきたいですね。