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機能性ディスペプシアの治療

最近「胃の調子が・・・」と言う方がちらほら見えますので、「機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia;FD)」について記事にしたいと思います。耳慣れない言葉で、最初はちょっと説明が多くなってしまいますが、なるべくわかりやすい言葉で書いてみますので、参考になる部分があればいいなと思います。

機能性ディスペプシアの簡単な説明

FDの定義としては、胃がんや胃潰瘍、ピロリ菌感染がないことが確認された上で、

  • 心窩部(みぞおち)の痛み・・・心窩部症候群
  • 食後の胃もたれ、早期満腹感・・・食後愁訴症候群

がある状態です。細かく言えば、半年前から症状がある&最近3ヶ月間上記症状があることが診断基準となるようですが、3ヶ月間も続かなくても、時々あるなら原因を考え対応したほうがいいのは明らかですね。

当院で胃の不調を訴える患者さんのほとんどが、これに該当すると考えています。

機能性ディスペプシアと腸の関連

機能性の症状で、消化器に影響が出るという点では、過敏性腸症候群(IBS)も同じグループです。病院の調査では、24%の確率で併発している方も見られるようです。参考としたサイトのページは消去されてしまいましたので、別の情報を貼っておきます。

日経メディカル:FD患者のIBS合併率はFD症状がない群の6倍超える

以前読んだ情報雑誌の中でも、FDについて、

胆汁や腸内細菌を含む小腸内容物が十二指腸を経由して胃に停滞しており、これが胃の粘膜を傷つけている可能性がある

という医師が書いた記事がありました。

ちょっと脱線

ちなみに上記引用した記事は最終的には「OLL2716株入りヨーグルト」の広告でした。そういったものが有効な場合は確かにあります。ただ2、3ヶ月摂っても変化を感じない場合は、別の原因か、乳酸菌の効果が出にくい身体の状態だと考えた方が良いです。

参考書籍

気功講習でお会いすることがある、クリニックの先生が執筆された書籍です。タイトルは逆流性食道炎ですが、著者略歴にあるとおり、各種消化器疾患を専門とされています。

機能性消化管疾患(胃・食道逆流症、機能性胃腸症、過敏性腸症候群)が発症する「しくみ」を明らかにして、しくみに基づいて、患者さん自らがしくみを運転して症状を改善していく「自立」を目標とした専門治療を行っている。

自分で治す! 逆流性食道炎 | 清水 公一 |本 | 通販 | Amazon

当院での治療

鍼灸マッサージ師の立場としてお伝えしたいのは、こういった「機能性」の症状こそ、鍼灸やオステオパシー(手技)の出番であるということです。

同じ症状でも原因は違うことが多々あります。今回の機能性の消化器症状に対しては、私は大まかに

  • 飲食(質・量)
  • 運動不足・姿勢不良
  • メンタル
  • その他

の影響に絞って考えます(「その他」は実際に見てあてはまる方にだけお伝えしています)。

治療は、主原因を探りながら進めるのですが、各要素は複雑に絡み合っているので、数回の治療で1つ「これ!」に絞ることは難しいです。

当院での治療の範疇を超えるものとして、メンタル的な問題が主要因の場合は、体の治療に並行して専門家による心への対処は必須だと考えています。ただ、心の問題に向き合うのは気軽なことではありませんので、良いタイミングを待ちながら体の治療を続けていきます。以前書いたIBSの記事でも少し触れています。

当院に通う以前に、メンタルの問題の解決を済ませている方がいらっしゃるのですが、とても早く身体の変化が出ますし、心身の繋がりへの理解もとても高いです。心・身体、どちらが先でも良いのですが、先に「形があり手で触れられる」身体をある程度整えた方が、「形がなく手で触れられない」心の問題も解消しやすくなります。

当院での具体的なアプローチ

メンタルが問題かどうかは、それなりに治療が進んだ段階で見えてくることですので、基本的に初めのうちは「飲食」「運動不足・姿勢不良」の影響を取り除きます。

  • 冷え・湿邪(余分な湿気)の除去
  • 内臓の下垂の矯正
  • 固まった筋・筋膜のリリース
  • 骨盤の調整

などです。

痛みの出ている部位=胃だけの問題、とは考えません。隣接している膵臓・横隔膜・肝臓、繋がっている小腸以下が無関係とは限りませんので、必ずチェックします。さらにそれらと繋がっている臓器・筋膜も見て問題があれば対処しますし、脳信号の異常も視野に入れて頭蓋骨も・・・と、結果として全身チェックすることになります。

先に挙げた引用を参考にして表現すれば、なぜ「胆汁や腸内細菌を含む小腸内容物」が胃に逆流しているのか。を考えて対処しなければ根本解決はしないと考えています。

FODMAPとSIBOについての記事も参考にしてみてください。

セルフケア

冷たい食べ物・脂っこいものを避ける

人により原因はまちまちなので、これがダメとは言い切れませんが、

  • ラーメン
  • アイスクリーム(中でも脂質の多いもの)
  • アルコール(特に冷えたもの)
  • 氷の入った飲み物
  • 焼肉
  • トンカツなどの揚げ物
  • ヨーグルト、ケーキ、ミルクティーなど乳製品を使ったもの

この中でよく摂るものがある方は、まず1ヶ月我慢してみて、体調がどう変化するか確認してみてください。原因となる食品を見つけるためにはできれば思い当たるもの1つずつ中止するのが理想的です。

ある程度元気な方であれば、ほとんどの場合は、睡眠をしっかり取った上で「飲食」に気を付ければ緩和していきます。それくらい飲食は重要です。

お灸

お灸の経験がない方は、火を使うのに抵抗があると思いますので、まずは簡単なこちらがおすすめです。

これを、食後1時間半以上経っている時に、お臍とみぞおちの真ん中(中脘 [ ちゅうかん ]というツボ)に貼ってみてください(気持ち悪くなってしまったらすぐにやめてください)。

火を使うのが怖くなければ、同じ場所(中脘)にこちらを。朝と晩、空腹時に1個、から始めてみてください。こちらも、気持ち悪い場合はすぐにやめてください。残ったお灸は他の症状の時に他のツボに使えますので、無駄にはなりません。

高麗手指鍼の考え方で手のひらを使う方法もあります。手のひらは熱さに強いため、お灸も強めのものを利用する必要があります。院内では手のひら専用の強めのお灸を購入いただけますが、通販の扱いがないようなので、どうしてもという場合は以下のようなかなり強めのタイプを探してみてください。

手のひらの上から4分の1の所(胃の相応点)に置きます。手のひらに関しては、「熱くてもう置いておけない!」となるくらいまで、何個でも続けてやるのが理想的です。悪いところほど熱を感じにくいからです。

胃以外の2箇所の点も消化器症状に効果があることがありますので、余裕があればやってみることをおすすめしています。

ストレッチ

背中や肩甲骨周囲のストレッチも内臓の膜につながっていますので、有効です。

ほとんどの場合、横隔膜の伸び縮みの動きが小さくなっていますので、深呼吸するような運動(ヨガ・ピラティス・気功)もおすすめです。

セルフケアで改善しない場合は

飲食に気をつけていても改善しない方、胸のつかえもある方、腰や背中の張りが強いといった方は、是非2、3回、治療を受けることも検討してみてください。

私自身もアイスや炭酸飲料など冷たい飲食をした日は、必ず自分で鍼灸をしてから寝ています。

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