臨床心理士の先生に薦められた「コフート心理学入門」を読み終わりました。
鍼灸学校時代、医療面接の授業で、ロジャーズの来談者中心療法の基本である「傾聴」を、実際のワークを重ねながら学びました。「病院の先生って症状のことしか聞いてくれないよなあ」と思っていた私にとって、大きな意義を感じる経験でした。この授業をきっかけに、ユング、エリクソンに関する書籍を読むようになり、人間の心理や、心理療法の奥深さを垣間見ました。
あまりに奥深かったのと、知識ばかりつけても心理療法に携わるわけではないし・・・とその後は心理学を掘り下げることはありませんでした。でも、患者さんと関わる時はできるだけ傾聴の姿勢を心がけ、体が緩んだ時にふっと出てくるような本当のメッセージを汲み取れたらいいな、という思いがあるのは、この授業の影響だと思っています。
そんな中で、久しぶりに心理学の本を薦めていただいたことで、傾聴から一歩(数歩?)進んだ自己心理学に触れることができ、新鮮な気付きがありました。高齢者が増え続ける現代の日本人が抱えていく問題にも、この心理学の視点から触れられていて、深く納得しました。
私はやはり「目に見えて触れることのできる体と向き合うこと」が自分にマッチした役割だと思っていますので、心理面にアプローチすることはありません。でも、「わかってもらえた」と感じることで患者が勝手に変わっていくとするコフートの理論は、自分が理想とする治療姿勢だなと感じました。体の慢性的な不調も結局は心(その人の考え方が作り出す生活習慣)が大きく関わっているのですから、何が症状を引き起こしているかに自らが気づき、緩やかに変わって行くことが、後戻りのしにくい治療効果に繋がると確信しています。
このサイト内のどこかでも書いていますが、体の治療を通じて、患者さんの心も含めた「全体」が緩み、回復に繋がればいいなと思っています。