こちらの和訳の続き。やっと結論。最後に感想も。
元記事はこちら。The seven-step palpation method: A proposal to improve palpation skills
5. Conclusion 結論
The implementation of this systematic teaching method, based on well established cognitive, motor, and perceptual theories, seems a valid way to help students gradually master the complexity of palpation skills required in osteopathy.
十分に確立された認知、運動、知覚理論に基づくこの体系的な指導法は、学生がオステオパシーに必要な触診スキルの複雑さを段階的に習得するのに有効な方法と思われる。
However, future studies will be needed to objectively confirm the impact of implementing the Seven-Step Palpation Method.
しかし、7ステップ触診法の影響を客観的に確認するには、今後の研究が必要である。
In future months, data will be collected to evaluate the improvement of students’ palpation skills and to assess more objectively if the use of this approach in an osteopathic curriculum can provide viable solutions for palpation teaching challenges.
この先数ヶ月で、学生の触診スキルの向上を評価し、オステオパシーのカリキュラムでのこのアプローチの使用が、触診教育の課題に実行可能な解決策を提供できるのかをより客観的に評価するためのデータが収集される予定である。
感想と個人的解釈まとめ
私の知識では理解できないところもありましたが、オステオパシーや鍼灸の実技を学ぶ時必ず「この自分の感覚と先生が伝えようとしている感覚は同じなのか、感覚は共有できるものなのか」という疑問を感じるので、やはり触診を教える・学ぶというのは複雑なことだと分かり安心しました。先生に手を取ってもらい教えてもらっても分からないことがあるのは、触圧覚の感度の違いかと思っていましたが、それだけではなく解剖学的な知識や視覚化の能力、脳に知覚に使える容量がどれだけあるかといった、計測しにくい要素が色々と関連していると分かり納得がいきました。
7ステップを自分なりにまとめると、
- リラックスした無理のない姿勢で行う。
- 模型や解剖学書を利用して解剖学的知識を深め、できるだけ詳細に、立体的にイメージできるようにする(知識レベルに応じて感じ取れることは異なる)。
- コンタクトする組織に対し、その動きが整うようなちょうど良い深さを意識する。
- 何を目的にやるのか、結果としてどうなるのが理想的なのか、を明確に意識する。
- 実際に対象となる組織にコンタクトする?
- 上の5ステップを自動化して繰り返せるようになったら、さらにそこから自分の動きとコンタクト対象の組織の変化に意識を向け、微調整していく。ここで得られることは知識レベルや経験によって異なる。
- オステオパシーのテクニック要素を付加していく?
です。論文の前半で説明されている「運動学習理論」を踏まえると、1〜5をレベルに応じた内容で繰り返すうちに長期記憶エリアに格納され、意識せずにできるようになり、使える脳の認知エリアが広がって、知覚できることが増えていくイメージだと解釈しました。そのためには数百回繰り返す必要があるとあり、セミナーや勉強会では同じ組織に対して練習できるのはせいぜい5回程度なので、自己練習が必須なのは明らかですが、日本ではなかなか難しい環境づくりだと思います。1回1回を丁寧にやっていくしかないです。
途中で出てきた「Semantic Qualifier(セマンテック・クオリファイアー:SQ)」の訳が分からず検索していたところ、「病歴情報を医学的に分類し、より上位の概念に置き換えて普遍化した用語」とわかりました。具体的に「Google scholar」や「UpToDate」「Pubmed」といった文献検索サイトでSQを立てる方法も提示されていました。日々患者さんの訴えから見立てをする際は、自分の知識の中から無意識にやっていたことですが、情報サイトを利用することでより広く深く推論するのに役立ちそうです。
長めの論文和訳は、途中で「日本語の論文でも理解しながら読み切るのが大変なのに和訳に手を出すとは…」と思ったので、よほど興味のある論文でない限りしばらくやらないと思います。